市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

PM2.5を軽視してきた日本の環境行政〜背後にある「道路イデオロギー」=交通量主義
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      中国からの飛来でにわかに注目を集めているPM2.5、環境省も急いで暫定指針を策定し測定ポイントの増(約600→1300)や健康への影響の分析に取り組むようです。

     しかし、2000年1月31日の尼崎大気汚染公害訴訟の神戸地裁判決でぜん息と車排ガス中のPM2.5の関係が指摘されながら環境省はずっとPM2.5の規制、基準策定をさぼり続け、基準の告示は2009年になってからでした。その後も、測定ポイントを増やしたり自治体への財政支援には消極的でした。

     一方、千葉県も、神戸地裁判決が排ガスと疾病との間の因果関係を認める根拠としたのが、千葉県が千葉大学医学部に委託して92年度から95年度まで行った県内11校の小学校児童を対象とする調査(千葉大調査)の結果であったにも関わらず、政府に対策強化・基準設定を迫ることなどはなく放置してきました。

     この背景にあるのが、「道路イデオロギー」です。
     これを機会に、政府、県は自動車産業と土木業界の振興を最優先してきたことを改め、環境基準の厳格化とそれに見合った通行量、通行車両の制限を行い、さらには「道路イデオロギー」からの脱却を宣言することで、今までの誤りを正す必要があるでしょう。

     さて、過去にPM2.5に触れた私のブログが2つありましたので以下に紹介します。

    ●道路イデオロギー=交通量主義から脱却し、交通需要を抑制する都市づくりを(その1)
     〜2000年尼崎大気汚染訴訟・神戸地裁判決の根拠となった千葉県内の健康被害の深刻化
    (2009.3.3ブログより)


     千葉県のみならず全国の都市計画は、容積率を含む土地利用規制の乏しさを放置することにより、あたかも自然発生したかのような膨大な交通需要を作り出し、それを口実に道路整備するという手法で進められてきたように思う。都市の成長管理という視点はなく、車の「無政府状態」を放置し、結局、自動車産業と土木業界の振興を最優先した。
     文科省学校保健統計調査結果では、97年〜07年の10年間でも、ぜん息被患率は倍増し、とりわけ大都市部においては増加が顕著だという。(「微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準設定を求める意見書」日本弁護士連合会)
     その原因は何か。2000年1月31日の尼崎大気汚染公害訴訟の神戸地裁判決は、米国ではPM2.5(粒径2.5μm以下の微小粒子状物質)の人体への危険性が明らかにされ厳しい大気質基準が提案されていること、幹線道路沿道地区の危険の増大は「自動車由来の」粒子状物質による影響であり、軽油の不完全燃焼によって発生するディーゼル排気微粒子(DEP)の関与が最も疑わしいと指摘した。
     米国は06年にPM2.5の環境基準を強化(年間基準(年平均値の3年平均値)15μg/㎥)し、WHOも同年ガイドラインを設定(年間平均濃度10μg/㎥)した。
     その後、07年の東京大気汚染訴訟の和解条件の一つにPM2.5の規制に向けての検討が国に課されたことから、ようやく環境省も検討を加速させ、環境基準設定に向け専門委員会を毎月開催している。
     ところで、神戸地裁判決が排ガスと疾病との間の因果関係を認める根拠としたのが、千葉県が千葉大学医学部に委託して92年度から95年度まで行った県内11校の小学校児童を対象とする調査(千葉大調査)の結果である。千葉県都市部の幹線道路の沿道地区(千葉市、柏市、市川市および船橋市の国道6号、14号、16号、京葉道路および湾岸道路の沿道50m以内)に居住する児童は、幹線道路がない田園部(市原市、館山市、茂原市、木更津市)に居住する児童と比較しておおむね4倍の確率で、気管支喘息を発症する危険があるとの解析結果が得られている。
     2000年1月の神戸地裁判決は千葉県の道路・環境行政を裁いたと言える。私は2000年2月初めに県庁環境部を訪ね、この地裁判決を千葉県としてどう受け止めたのかを担当者に問うた。その時のことを9年たったいまでも覚えている。無反応だった。
     判決は「その限度を超える供用が沿道居住原告にもたらしている侵害は、単なる生活妨害というものではなく、従来どおりの供用の継続は、沿道の広い範囲で疾患の発症・憎悪をもたらす非常に強い違法性があるといわざるをえず」としている。 
     環境省発表のデータでは県内3箇所(市川市真間小学校、市川市塩浜体育館、野田市16号線沿い)でPM2.5が測定されているが、WHOガイドラインのみならず米国環境基準をも超えるレベルにある。
     環境省による厳格な環境基準の早急な設定とともに、通行車両の車種(ディーゼル車)と通行量の制限が求められる。

    【参考】PM2.5、VOC、ダイオキシンなど千葉県の大気汚染について
    〜09年度決算審査特別委員会詳細報告А峇超生活部」から(川本ブログ(2010.11.12)
    抜粋)


     (1)光化学オキシダント・二酸化窒素の環境目標値未達成に関して

    【川本】
    大気汚染に関して、大気保全課の21年度の大気汚染状況報告によれば、光化学オキシダントが全局で未達成、二酸化窒素は県独自の環境目標値の達成率が一般局90.4%、自排局37.9%、ということですが、未達成の要因と今後の対策、それから、未達成であることによる健康被害との関係について、把握状況をお伺いしたい。

    【北田大気保全課長】
    光化学オキシダントについては 全国的にも環境基準を達成している局がほとんどないという状況です。未達成の要因としては、その発生メカニズムが十分に解明されていないためと考えています。
    今後の対策としては、国では窒素酸化物NOxや揮発性有機化合物VOCが光化学オキシダントの発生に関係しているということから、県としても大気汚染防止法に基づいて光化学オキシダントの発生抑制として窒素酸化物や揮発性有機化合物の削減に取り組んでおり、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
    二酸化窒素の県環境目標値の未達成局は、国道6号、14号、16号、357号等の主要幹線道路が集中する東葛・葛南及び千葉地域に設置された自動車排出ガス測定局でして、未達成の要因としては、幹線道路の自動車排出ガスに加え、交通渋滞等も大きな要因と考えております。
    今後の対策としては、工場等から排出される窒素酸化物も無視できないことから、工場等の固定発生源対策を引き続き実施するとともに、自動車Nox、PM法に基づく最新規制適合車への代替やその普及、さらにエコドライブの取組みを促進するとともに、交通流の円滑化につながる取り組みについて関係機関に働きかけをしてまいりたいと考えております。
    未達成なことによる健康被害の有無の関係ですが、光化学オキシダントによると思われる健康被害の届出状況は、過去5年間でみてみると、平成18年の17人という報告があります。その後、年により差がありますが、21年度は0、22年今年は9月末現在で、14人の報告がございました。

    (2)PM2.5の測定状況

    【川本】
    SPM(浮遊粒子状物質)については、ディーゼル車の規制もあり、環境基準を達成するという状況ですが、課題は喘息などの呼吸器疾患、心筋梗塞などの循環器疾患に影響があると懸念されている粒径2.5ミクロン以下のPM2.5ですね。それの測定状況はどうなのか。

    【北田大気保全課長】
    PM2.5、微小粒子状物質のことだが、この測定状況は、現在PM2.5の測定は県では実施しておりません。
    なお、野田市の国設野田局が平成14年度から、県環境研究センター内にある岩崎西局では本年4月から、それぞれ、国による測定は行っていますが、いずれも測定データは環境省の管理となっています。

    【川本】
    PM2.5については、千葉県では測定していないが国の方でやっていると。データは当然、国から入手すべきだと私は思いますが、入手されているかどうか。

    【北田大気保全課長】
    PM2.5の国測定データの入手ですが、今のところ、国からの提供はいただいておりません。

    【川本】
    報告されているデータによると、平成13年度から18年度で市川市の2箇所でPM2.5が20μg/㎥です。基準というのは、アメリカでは15、WHOでは10と言われているが、喘息患者との関係は千葉ではどうなのかと学校保健統計のデータを見ても少なくとも減少はしていないということで、しっかりと把握する必要があると思いますが、どうなのか。
    国のデータについてもきちんと大気汚染情報を掲載するということを強く求めたいと思います。東京都などはきちんと掲載しているのではないかと思うが、いかがでしょうか。

    【北田大気保全課長】
    県としても今年度PM2.5の測定値を4箇所作る予定でして、今後県としては、順次整備をするという考えでおります。

    【川本】―――要望
    PM2.5、測定を始めましたら、是非 状況をきちんと報告をいただきたいと思います。特に SPMの問題と喘息の問題、これが関連性が裁判で認定されたというのは、兵庫県尼崎市の道路公害訴訟で その因果関係の元となるデータは千葉県が千葉大医学部に委託して行った16号線などの沿道の子どもたちの喘息調査結果だったと思う。そういった意味では、PM2.5を含めてしっかりとふまえながら、健康福祉部と調整しながら学校保健統計調査などを照合し、喘息の患者を削減していく努力は必要だと思います。ぜひ、検討していただきたいと思います。

    (3)VOCの測定の実施について

    【川本】
    いくつかのものは、既に測定されているようですが、SPMや光化学オキシダントの原因物質と言われるVOC(揮発性有機化合物)、これをもっと幅広く、大気測定すべきだと思うが、この測定の実施状況はどうなのか。

    【北田大気保全課長】
    VOCの測定について、VOCについて広く測定しては、というご質問ですが、VOC全体については、光化学スモックの原因物資の1種として、非メタン炭化水素ということで、県内の53測定局において自動測定器が整備されています。

    【川本】
    VOCの測定のところで、今回の野田市の産廃処分場の周辺の健康被害で詳細なVOCの測定の定性分析の結果について、それをみると当該のエリアから3.5km離れた地点でVOCがいろいろな詳細な調査をした結果、23種類ぐらい測定されている。化学物質過敏症との関係もあり、VOCに関しては、相当結構周辺に拡大されている。車の排気ガスだけでなくて、プラスチック由来の被害のようなものもあるのではないか、そういう意味で測定をもう少し、場を広げていくということを検討すべき時期ではないかと思うが、いかがでしょうか。

    【北田大気保全課長】
    VOCについては、全体のものの把握は可能ですが、物質を特定して連続的に把握するというのは、今のところ、機械がありませんので、ターゲットを絞って測定するというようなことになると思います。


    Posted by : 川本幸立 | 環境問題 | 10:08 | - | - | - | - |
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