市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

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7月27日県土整備常任委員会詳報
〜公社等外郭団体における不正経理問題について
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〜第1回千葉県住生活改定検討委員会を傍聴して >>
財政赤字と消費税とアクアライン
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     猛暑が続く。4日午後は、第27回土気東環境連絡協議会に出席し、5日午後は、企業庁新経営戦略プラン(改定版)を審査するH22年度第2回千葉県行政改革推進委員会を傍聴した。若松行革委員が、企業庁の清算会計について管理・分譲・貸付、負担金などを箱を分けて管理し、どこに損失がでているか明確にすべきと主張していた。その主張を聞きながら、当時の道路公団が2000年度からアクアライン、千葉東金道路、京葉道路などを「千葉プール」に一括し、アクアラインの膨大な赤字を隠していることを思い出した。

    土気東環境連絡協議会は、民間の区画整理事業(http://www005.upp.so-net.ne.jp/boso/toke.htm)の調整池が千葉市の都市公園である「昭和の森」内の貴重な動植物の生息地につくられることから、アセスに記載のある保全対策や周辺への影響などについて事業開始後の情報提供と意見交換を行うため、1998年に設置され、市、事業者、県自然観察指導員協議会(県指協)、土気環境安全協議会(地元住民)の4者で構成される。事業は今年3月に終了したことから、協議会も今回で終了する。今後、13年間の協議会に提供された情報を整理し、アセス手続きと実際との差異について記録したいと思う。

    3日午後は、県ネット政策室主催の税制学習会第一回「消費税をどうするか?」で、私は『消費税をどうするか-再分配と負担の視点から』(小此木潔 09年 岩波新書)をもとに、消費税導入の背景と導入後の政府の財政政策の失敗、人間らしい生活を保障する財源のための税制の展望について報告した。
     法人税、所得税の最高税率をもとに戻す、優遇税制も廃止する、社会保障及び教育以外の歳出(つまり土建型公共事業、軍事費など)の徹底削減、特別会計の無駄の排除などで、消費税のアップは不要と思われる。
     消費税導入の理由となった財政赤字の要因の一つが、米国の圧力である。
    「車産業に象徴される日本の輸出増→経常収支の黒字→貿易不均衡の是正を求める圧力→内需拡大→公共事業の追加→国債発行額の増加→財政赤字→消費税導入」という連鎖だ。
    そもそも輸出大企業は、消費税の「輸出戻し税」でボロ儲けし、国内中小零細企業にとって重い負担となる。地域振興の観点からもマイナスだ。
     米国の圧力によるこの公共投資の中に1兆4千億円のアクアラインがある。
    「日米構造協議」の90年の最終報告書には、10年間430兆円の公共投資計画が盛り込まれたが、これは1995年度から13年間で630兆円に増額修正された。
     そのアクアラインの800円社会実験が開始後、1年経過した。最新のデータによると観光入り込み客数には目立った増加はみられない。

     5月27日に行われた安田八十五氏(関東学院大学経済学部教授)による講演会「アクアラインと地域振興」(主催:県議会市民ネット・社民・無所属会派)の報告文を県ネットの「Sファイル」に掲載したので以下に紹介する。

    【参考】(県ネットSファイルより)
    東京湾横断道路による地域開発効果の総合評価と政策提言
    〜講演会「アクアラインと地域振興」報告

    総額50億円(内、千葉県負担25億円)のアクアライン社会実験が、昨年8月から来年3月までの予定で行われている。この社会実験について、アクアラインそもそもの成り立ち、地域振興への影響などについて、アクアラインの計画当初から発言されてこられた環境政策学者の安田八十五氏(関東学院大学経済学部教授)による講演会「アクアラインと地域振興」(主催:県議会市民ネット・社民・無所属会派)を5月27日に開催した。その概要を以下に報告する。(文責:川本幸立)

    1.アクアライン事業計画の変遷と実際

     中曽根内閣の「民間活力導入のビッグプロジェクト第1号」であるアクアラインは1987月に着工し、97年に開通した。87年の事業認可時の総事業費1兆1500億円、普通車料金4900円、供用20年後の計画交通量64000台/日、30年償還が、97年の供用時はそれぞれ1兆4400億円、4900円(但し5年間は4000円)、53000台/日(初年度25000台/日)、40年償還に変更された。

     開通後5年間の日平均交通量は9600台〜14000台で、収支実績は98年度収入148億円、支出468億円(管理費56億円、金利412億円)で320億円の赤字、99年度314億円の赤字、2000年度は330億円の赤字である。金利分が巨額で維持管理費の8倍ある。
     実際に採算ベースにのるには日平均交通量は7〜8万台必要となる。

     なお、アクアラインの単独採算では償還が不可能であることから2000年7月、国土交通省と日本道路公団は京葉道路・千葉東金道路との料金プール制を導入した。このプール制の導入に伴いアクアライン単独の費用が公表されなくなり、その後の収支実績について評価ができなくなった。

    2.アクアラインの費用便益比は0.180

     米国では公共事業についてはマニュアルがあり、予算要求のときは必ず費用便益分析を出さねばならない。公共事業を行うには費用便益比(B/C)は最低1.0以上、実際は1.5や2以上が求められてきた。最近ようやく、日本でもB/Cの議論ができるようになった。
     02年にアクアラインについて安田・川村で費用便益分析をしたところ、便益が2274億円、費用が1兆2640億円となりB/C=0.180となった。このことからアクアラインは費用便益費が1よりはるかに小さい結果になり、建設に値しない事業であることを示している。

     一方、アクアライン事業事後評価委員会(中村貢委員会)が99年に実施した費用便益分析は、便益3兆2500億円、費用が1兆7千億円で費用便益費が1.9としている。上記の0.180との違いの理由は、便益の96%を占める3兆1200億円の走行時間短縮便益を過大評価するとともに、ダブルアカウント(二重計算)していることによる。そもそも前提条件となる推計方法をまったく公開していない。科学とは再現されなければならないが、これでは科学とは言えない。環境悪化費用も推計せず、需要曲線の推定すらしていない。

     こうした国土交通省の費用便益分析の手法は今も同じで、圏央道裁判に出廷した役人は、費用便益分析の根拠を問われてもコンサルに丸投げのため裁判でもまともに答えられないのが実態だ。

    3.地域振興に果たす道路の役割は派生的なもの

    道路の役割は何か? 道路をつくれば地域を振興できるか? 道路だけ整備しても地域の振興などできない。そもそも、需要には「本源的需要」と「派生的需要」があり、道路は派生的な存在だ。地域の総合的な魅力が問われることになる。
     木更津市は目標人口を34万人→24万人→20万人→17万人と下方修正し、アクアライン開通後も人口は増えてはいない。中心市街地では西友、そごう、ダイエー、デイマートが閉店し、82年に3093あった商店は91年が2330と25%減少し、この減少傾向は変わらない。地価も91年との比較で04年は住宅地で7分の一、商業地で19分の一である。
    アクアラインは木更津市にとって、期待したほど地域振興に役立たなかった、結論的にはマイナスだったと言える。

     もっとも、木更津の商圏の縮小は、房総半島の半島性の脱却によりその優位性を失ったことが一番大きい。
     次に、横浜や川崎など強い方に買物客を奪われるという「ストロー効果」の進行していることだ。社会システムも「重力の法則」と同様で、2地域間の時間距離が半分になると大きいほうに4倍流出していくことになる。
      
    4.アクアラインの失敗から学ぶべきこと

     経済論争で勝てるように政策的代替案をつくることが重要だ。東京湾は世界で最も豊かな閉鎖系水域であり、干潟の環境的価値は大きい、埋め立て施策に対抗するために、盤洲干潟を仮想的市場評価法(CVM)で環境価値を評価した結果、1年間で1671億円の経済価値があると算出した。 
     アクアラインの失敗の本質は、日本の社会システムの依存的な体質にあり、効率性、公平性、参加性から公共事業のあり方を総合評価していく必要がある。
     そのために、公共事業基本法の法制化が求められる。
    Posted by : 川本幸立 | アクアライン問題 | 15:28 | - | - | - | - |
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