市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

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原発のストレステスト
(シュミレーションによる安全性総合評価)の課題
〜関電大飯原発3号機ストレステスト結果報告が
保安院に提出される
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      今年7月7日の参院予算委員会で当時の菅首相が「全原発を対象にストレステストを実施する」と発言し、それを受けて7月22日、経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」)は「東京電力(株)福島第一原発における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施について」という声明を発表し、その実施を各事業者に指示しました。

     そしてこの指示を受けて、関西電力が定期検査で停止中の大飯原発3号機(福井県おおい町、118万kw)について、ストレステストの結果報告が本日保安院に提出されました。これは全国の原発で初めてとなります。

     大飯原発3号機は、運転開始日が91年12月18日、建設費は4582億円、想定する地震動は(旧:設置許可時の値)が405ガル、(新)700ガル、想定津波高は(旧)が記載なし、(新)が1.86mです。
     
    この原発では、2008年に原子炉容器出口管台溶接部で、板厚74.6mmに対し20.3个凌爾気里劼啌笋譟甕力腐食割れが見つかっています。点検、検査によっても見過ごされる応力腐食割れは他にも多数あると思われますが、板厚の27%に及べば、当然、耐震面でも大きな欠陥となります。

    保安院は今回の報告書について、「今後、当院は、専門家のご意見も伺いながら当院としての評価を取りまとめていく予定です」とあります。ともかく、今まで電力会社の報告の鵜呑みで終わってきた保安院の審査能力と第三者的立場が改めて問われることになります。

    ● 建物の構造健全性からみたストレステスト、確率論的耐震安全評価(PSA)の課題
     
     さて、この前の日曜日23日の午後、保安院のストレステストを批判的に検討する勉強会に参加しました。
     私は、
    〃物の構造健全性に係る安全裕度の意味(鉄筋コンクリート耐震壁のせん断ひずみとひび割れ)、
    地震動と建物の応答、
    B竸明澤弯該沙愎法平兄愎法砲粒詰廖粉霆狠録牝亜∋塚召離螢好など)と批判、
    こ領論的耐震安全評価(PSA)の意味、
    の4点について報告しました。

    建物の構造健全性からみたストレステスト、確率論的耐震安全評価(PSA)の課題は以下の点です。
    1. 基準地震動をどう設定するかが一番のポイントであり、「立地は無理」という選択肢も含めた判断が求められるが、地震学の未熟な現状、御用学者が跋扈し「安全性の科学」が未確立の状況では後世にわたり妥当な判断をすることは所詮不可能ではないか。
    2. 設計上の不確実性や材料・施工による品質のバラツキを考慮した安全率は「余裕」とはいえない。
    3. 施設被災後の大規模な複数回の余震に対する残存耐震性能の評価がない。
    4. 設計段階の変形の許容値(せん断ひずみ2×1/1000)、変形の限界値(同4×1/1000)をそれぞれ一次評価、二次評価の「安全裕度」、「全体的な余裕」としたことについて、せん断ひずみの許容値、限界値は解析評価上の仮想点に過ぎず、実際のコンクリートや鉄筋の物理的な現象と対応するものではないことから、そもそも「余裕」の尺度として使用すること、個々の厳密性が求められる被災建物の評価として使用するには無理がある。

    ● 反省の無い原子力村の面々
     〜「EU主要諸国の原発におけるストレステスト調査団 帰国報告会」を傍聴
     
      10月14日午後、都内で開かれた(社)日本技術者連盟主催の報告会を傍聴しました。9/11〜9/18の期間、EU本部、英仏独を訪ね、欧州のストレステストの実態(考え方・仕様など)についてヒアリングした調査団(14名、団長:諸葛宗男・東大公共政策大学院特任教授、副団長:寺田典夫・関電原子力事業部部長)の報告です。

     傍聴した感想は以下の通りです。

    1.9/15が各国のプログレス(進捗)報告の提出期限で報告作成直後で絶好のタイミングだったとしながら、各国のプログレス報告内容については触れられず、拍子抜けしました。
    それはともかく、調査団の報告のまとめでは、「EU及び各国とも事故の詳細情報を渇望している」とあります。EUのストレステストの目的が、「福島原発で発生した事故の観点から、発電所の安全余裕を再評価する」ことであるにもかかわらず、各国がフクシマ事故についての情報が必ずしも十分でない状態で拙速にまとめた(各国は独自に情報収集したようですが)ことに首を傾げます。

    2.EUでは、原子力安全の一義的な責任は原子力事業者が負うもので、
    .轡咼▲▲シデントにおいて、事態収拾の決定権は政府ではなく事業者・現場にある、
    ▲好肇譽好謄好箸箸蓮∋業者によるより高い安全性を確証しようとする自発的活動である、
    と日本政府の対応がEUのモノサシでは理解しがたいものである旨が報告され、またそのことが「強調」されました。
    しかし、東京電力による情報隠蔽、不十分極まりないシビアアクシデント対応、さらに『原発安全神話』をつくり上げるために東京電力は、札束で政治家を、天下りポストで役所を、寄付金で学界を、贅沢なPR費でマスコミを支配してきました。(「東電帝国 その失敗の本質」志村嘉一郎著、文春新書) しかも、被害補償も血税が頼りです。
    「生命の安全」を第一に考えた時に、このような東京電力に事態収拾の決定権や自発的なストレステストを委ねることができないのは当たり前です。
    原子力村の反省の無さが、こうした報告からも伺えます。

    3.原子力施設の安全規制、及び住民参加と情報公開のシステム、原子力施設の事故時の対策、賠償責任の主体などの施策とストレステストを切り離して考えるわけにはいきません。しかし、各国の総合的な原子力政策・施策に触れることなく、ただストレステストのみを引っ張り出して調査報告としていました。公共政策を専門とする諸葛団長の勉強不足ではないでしょうか。
    なお、欧米の原子力政策については、「孤立する日本の原子力政策」(日本弁護士連合会 公害対策・環境保全委員会、実教出版、1994年)でも知ることができます。

    ■米国報告─漸奮愡唆版酳館
    1944年に西アフリカ沖で拿捕したドイツUボートの実物、人体の輪切りや24段階にわけた胎児の展示に驚きました。CTAトレインのグリーンラインとバスを乗り継ぎましたが、間違ってシカゴ大学で降り、20分ばかり歩きました。
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    CTAトレインの車窓から見る低所得者用アパート
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    Posted by : 川本幸立 | 東北・関東大震災と原発問題 | 11:59 | - | - | - | - |
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