市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

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原子力安全・保安院、はじめに再稼動ありきの「大飯は妥当」表明 〜関西電力大飯原発3号機及び4号機のストレステスト一次評価審査
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      経済産業省原子力安全・保安院は13日、関電が提出した大飯原発3号機・4号機の「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価」(ストレステスト)について「妥当」とする審査書をまとめ、内閣府原子力安全委員会に報告しました。

     去る2月8日のストレステスト意見聴取会では、メディアはほとんど報じようとしませんが「ストレステストを再稼働条件とすることの非論理性」が一層明らかになっていました。(下記のA氏の意見聴取会傍聴記参照)
     原発メーカーから寄付を受けた御用学者が主導し傍聴者を締め出す意見聴取会(1月17日ブログ参照)においてすらそういう実態です。しかし、メディアの「言論統制」は徹底しています。
     
     意見聴取会委員の井野、後藤両氏の緊急声明を以下に転載します。

    ●関西電力大飯3・4号機ストレステスト審査書提出に抗議する緊急声明(2月13日)

           ストレステスト意見聴取会委員 井野博満・後藤政志

     原子力安全・保安院は、本日、関西電力大飯原発3・4号機の一次評価を「妥当」とする審査書を原子力安全委員会に提出しました。私たちは、このような拙速なやり方は、とうてい認められません。

     2月8日の第8回意見聴取会では、様々な技術的な課題が残されていることが明らかになりました。原子力安全・保安院も、その場で議論を終了するとは明言しませんでした。当然、継続審議となると思いました。審査書が原子力安全委員会に提出されたことに対して意見聴取会の委員として抗議します。

     ストレステスト意見聴取会では、徹底して議論を尽くすことが、国民に対する原子力安全・保安院の責務です。次のような根本的な問題が残っています。

    (1)判断基準について、保安院は「福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が来襲しても同原子力発電所のような状況にならないことを技術的に確認する」としています。しかし、津波の想定は11.4メートルで、福島事故の14メートルよりも低くなっています。そもそも、福島事故は収束しておらず、原因もわからない状態です。

    (2)評価の対象、基準の適用について以下の技術的な疑問があります。
    制御棒の挿入性を検討の対象から外しています。
    基礎ボルトなど機器の強度については、安全率を削って評価しています。
    原子炉建屋などの構造強度に関わる許容値について、耐震バックチェックの基準より甘い許容値を適用することを認めています。
    本来の設備は福島原発事故前から改善せず、消防車や非常発電装置などの外部仮設設備だけで安全だとしています。
     
    (3)ストレステストは、過酷事故対策の検証を含めた二次評価と合わせて評価しなければ、地域住民が安全性を判断する上では意味がありません。
    電力事業者は、原子力安全・保安院の指示により、これを2011年末を目処に提出するはずでしたが、関西電力は二次評価結果を未だに提出していません。

     原子力安全・保安院が、現時点で「妥当」としたことは、はじめに再稼働ありきの見切り発車と言わざるを得ません。このような姿勢こそが、福島原発事故を招いた要因です。このように原子力安全・保安院は、規制当局としての役割を十分に果たしていません。まずすべきことは、自らのありようについて根本的な反省をすることです。

     本日の審査書の提出は、「安全性に関する総合的評価」とされるストレステスト評価の体をなしていません。
                                 以上

    ●第8回ストレステスト意見聴取会の報告(2月8日開催、A氏記・後藤委員随行員)
     
    (1)議事にあたって
    1. 出席委員は8名(阿部、佐竹、高田委員は欠席)
    2. 本館17階の「国際会議室」にて開催。傍聴者は建物さえも隔離し(別館)、モニター視聴。
    3. 議事は‖臠咤魁4号機の評価、伊方3号RCPシールLOCAの件のみの議論で時間切れ。美浜、高浜、敦賀、川内、玄海等の議題は次回に持ち越された。
     
    (2)大飯3,4号機報告書へのIAEAレビューについて
    IAEAレビュー結果の「予備的な要旨」(資料8-1-1)について、後藤委員より「IAEAはST手法についてレビューしただけであり、大飯報告書の中身(裕度や安全性)について言及しているものではない」、「たった数日のレビューで分かることは限られている」との指摘あり。井野委員よりは別途、IAEAレビュー要旨に関する5項目の質問書が提出されており(資料8-1-3)、「整合すべき対象であるIAEAの安全基準」が明確でないこと、IAEAが指摘している「許容安全余裕の定義の事業者への伝達」がなされていないこと、などが指摘された。
     
    (3)大飯3,4号、保安院作成の審査書(案)(資料8-1-2)に関する主要議論
     
    1. 前回(1月8日)に提示された審査書(素案)を一部委員のコメントも採り入れて修正したとのこと。保安院より修正部分(下線表示)の早口(聞き取り難)説明あり。
     
    2. 計算結果について、後藤委員は「建物の許容ひずみ値を4.0E-3まで拡大することは問題であり、更に、4.0E-3を超えても大丈夫だという評価は許されない。3.0を超えると固有振動値も異なってくる」と指摘。井野委員も基礎ボルトの例を引き、「評価で数値が不足すると、実力値を持ち出して、許容値を上げてくる。安全率を吐き出すことであり、理解は得られない」と指摘。保安院は、「規格基準から外れた許容値の採用は報告書内にその理由を明記している」としているが、許容値の安易な底上げが各所で見られる。
     
    3. STによる結果数値について、後藤委員は「諸条件の無謬性を前提に導き出された結果(耐震裕度1.8といった)にどれほどの意味があるのか?」との疑問を提示。他の委員たちからも、渡邊委員「数字にはどの程度の保守性や不確実性があるのか?」、「確率論的安全評価(PSA)等、他の評価方法との組合せも必要」、西川委員は「STは改善のためのツールであり、数値を出すことが目的ではない」、「本当らしい数値が出されているが、ありえない。1.8等の独り歩きは拙い」等の意見が相次いだ。
     
    4. これらを踏まえて、井野委員は「STは発展途上の手法であると理解する」、「少なくとも、被害想定を含めた二次評価を併せないと、安全評価として成り立たない」と、不十分なST一次評価をもって再稼働へのステップとしてはならないと主張。
    一方、保安院の市村課長は、二次評価については事業者に提出を促していくものの、一次評価だけでも意味はあると考えるので、それをもって地元理解と政府による政治判断を求めていきたいと政治日程優先の考え方を述べた。
    後藤委員は「福島で3炉も炉心溶融を起こしていながら、一次評価では、そこまで踏み込んでいない」と批判、井野委員は「三大臣に応える形でスタートしたものの、議論の結果、一次評価の結果だけでは(稼働)合否の判断となりえないことが判明した。地域にも説明は出来ない」と主張。更に、「計画書によれば、二次評価は2011年末を目処に報告することになっているにも拘わらず提出されていないのは事業者と保安院の怠慢である」と指摘した。
     
    5. 「審査の判断基準」について、保安院、市村課長は、審査書案第12章に記述しているように、「福島第一を襲った地震・津波が来襲しても、同じような事故に至らないこと」としていると。それに対して、井野委員は「福島事故の検証も済まないうちに、どうしてそんなことが言える?」「"同じような"の定義は?」との疑問を投げかけ、曖昧さは判断基準とはなりえないと指摘し、再検討を求めた。
     
    6. 審査書について、後藤、井野両委員からは、「燃料棒問題等、未回答事項が多く残っている」、「聴取会委員のコメントをしっかり反映のこと」、「本検討には"考慮されていない"事項を明記のこと。でなければ評価の網羅性が誤解される」等の意見が出されたが、市村課長は、「頂いた指摘を踏まえ、保安院の責任をもって審査書を取り纏めたい」と、これらの意見の反映については明確に応えなかった。
     
    7. 最後に後藤委員より、「聴取会は公開を前提に始めた。ルールを定めた上で傍聴体制に復帰させてもらいたい」と主張。市村課長は、「環境を整えることが出来るかどうか、指摘を受け止めて努力はする。対応は考えたい」と述べた。
     
    (4)感想
    そもそも、原発の安全評価手法としてのストレステストの有効性への疑問、基本的にはフクシマ前と何ら変わらない審査の体制と進め方への疑問、数値的にも多くの問題点が指摘されている大飯報告書、等々、多くの基本的な問題点が未解決のまま、保安院は政治日程を最優先して大飯3、4号の最終審査書を原子力安全委員会に送ろうとしています。このことは勿論「予め予測されてはいた」ものの、井野、後藤両委員による意見聴取会での一貫した追及により、多くの市民の前にいっそう明らかにされたと思います。多くのマスコミによる「これで再稼働へのステップが一歩進んだ」という政局優先の解釈を許さずに、この意見聴取会で明らかになった「ストレステストを再稼働条件とすることの非論理性」をいかに立地地域住民、多くの市民、議員、首長たちと共有することが出来るかが今後の課題だと思います。意見聴取会では引き続き、大飯3,4号の問題を採り上げると共に、伊方や美浜、玄海、泊、等々に特有の問題点も指摘せねばなりません。地域との一層の連携の必要性を痛感します。そのためにも、11月14日以降、8回の意見聴取会を通じて明らかになったストレステストの諸問題点を改めて整理し、それぞれの場で公表、共有していく作業が必要です。ご協力をお願い致します。
     

    Posted by : 川本幸立 | 東北・関東大震災と原発問題 | 22:48 | - | - | - | - |
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