市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

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原子力、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーを含め科学の存在理由は「人権の保障に寄与すること」ではないか〜「人権より秩序」を前提にした「リスク」「危機管理」論が跋扈するおかしさ
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     ●現憲法の人権論の視点で「科学のあり方」「科学者の責任」の議論を

     日本におけるバイオ時代の環境保全・公害防止の研究面及び法的規制の立ち遅れを克服し、人権を擁護することを目的として有志で「バイオ時代の安全性・環境研究センター」(現・バイオハザード予防市民センター)を設立したのが13年前の1999年の3月でした。(その年の9月30日にJCO東海事業所で臨界事故が起こりました。)
     初代の代表の芝田進午さん(国立感染研実研差し止め裁判原告団長(当時))が2000年7月のセンター会報に寄せた「人権論と科学論」と題する「科学を成立させる根拠、前提はなにか」に関する論考の中で、科学(science)と良心(conscience)が離れがたく結びついているように、科学は、広義には人間の権利(right)、狭義には人格権から切り離して論じてはならないものであること、倫理・良心・健全な良識(common sense)を前提にしてのみ、科学が成り立ちうるものであることが述べられています。
     私は、芝田さんの主張は現憲法(前文、11〜13条など)の観点から当然導き出されるものだと思います。

     2月29日の「朝日新聞」の「耕論」のテーマが「科学者の責任」ですが、学際計算統計物理学が専門という大阪大学教授の菊池誠氏の主張が「「危険」説明し極論広げるな」という見出しで紹介されています。「福島県立医大の山下俊一さんなんかは安全を強調しすぎて信用してもらえなくなった。よく聞くと極端なことは言ってはいないし、ある種の使命感で発言したんでしょうが、・・・」「安全・安心を求めるあまりリスクはすべて排除しろという「ゼロリスク信仰」も問題です。牛海綿状脳症」(BSE)であれば、全頭検査という極端な対策も不可能ではなかった」など・・・。

     残念ながら菊池氏の主張には、福島県民の人権の視点、あるいは人格権の尊重の上に立ち現代の最新の科学的知見と万全の施策を講じてリスクをゼロにするための予防策(=予防原則)をとることを怠ることに協力してきた科学者たちの責任、あるいは安斎育郎氏のような「反原発の論客」が排除される「原子力むら」の構造、大学の体質を問う視点がみられません。
    科学者の責任といえば、例えば、事業者のストレステスト結果報告内容を審議する「意見聴取会」(正式名称:発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に係る意見聴取会)の山口彰委員(大阪大学大学院教授)が三菱重工の関連企業から「受託研究」の名目で3385万円の研究費を受け取っていることが報道され、利益相反の疑いが指摘されています。
    (委員では他に、岡本孝司・東大工学研究科原子力専攻教授(200万円)、阿部豊・筑波大学大学院システム情報工学研究科教授(500万円)がいます)

    菊池氏には、「秩序」の視点ではなく、現憲法の「人権」の視点で勇気をもって自らの足元の大学の体質を問う意見を発して欲しいものです。
     
    ●    ナノテクノロジーの課題
     
    先日深夜のNHK・BSで3日連続で放送されたナノテクノロジー(ナノテク)のドキュメンタリー特集を観ました。基礎となる単位の「十億分の一」を意味するナノ(n)と言われてもピンときませんが、例えば60兆個(成人)の細胞で構成される人体でDNA一個の大きさが2nm、原子間の間隔が0.12〜0.15nmと言われると、その超微細さを少しは想像できます。しかし微細物質であるアスベスト(発がん性)や車の排気ガス中のSPM(ぜんそく)の危険に私たちは今もさらされています。番組では最初の2日間はナノテクが医療、環境など多方面で多くの課題を解決するバラ色の世界(脳などの生命機構がナノテクそのもの)が語られ、3日目にナノテクのリスク(組織内に入り込み細胞などを損傷する健康被害の可能性)が紹介されました。

    ちょうど手元にある「DNA通信」(122号、2012年1月19日発行)で、天笠啓祐さんが「原子力・バイテク・ナノテク」を人間がコントロールできない「非人間的技術」であり、生命と相容れないとし、ナノテクの危険性について次のように指摘しています。
    「市民は、ナノテクが持つ潜在的な危険性を知らされないまま、数多くの応用された製品をすでに使用している。特に商品化が進んでいるのが化粧品である。問題は、ナノレベルの物質が粉末状態で飛散し、いったん肺の中に取り込まれると排出が困難となり、細胞や組織を傷つけることである」「界面活性剤のような体の表面を守る脂を溶かすものが存在すると、皮膚から体内に侵入する危険性が強まる」

    すでに化粧品、抗菌剤、スポーツ用品、繊維製品、電池、電子機器など広範囲に使われ始めているカーボンナノチューブの発がんの危険性について、名古屋大学大学院の生体反応病理学のチームがラットの腹腔内に投与して発がん性(中皮腫)があることを突き止めたことが昨年11月に報道され、大阪大学の堤康央教授(毒性学)の実験や産業技術総合研究所の動物実験などの結果からも「発がん性や胎児への影響を示す結果が相次いでいる」と警鐘がならされています。(「週刊金曜日」2012.2.12)

    ●昭和電工との19回目の協議会開催〜不十分な「想定外の想定」

    前掲の週刊金曜日の記事によれば、昭和電工(昭電)は1996年に川崎事業所で世界初となるカーボンナノチューブ量産に入り、07年には年産100邸09年には大分コンビナートで年産能力400鼎領婿困魍始したと公表しているそうです。

    ・土気研究センターでの遺伝子組換え実験の取りやめを表明

    その昭電の研究開発センターが土気の工業団地にありますが、この研究開発センターと地元町内自治会との第19回目の環境安全協議会が2月25日(土)午後開催され私も委員の一人として参加しました。この協議会は1994年に千葉市立会のもとで締結した「環境安全協定」に基づいて95年は2回、96年以降は毎年1回開かれてきました。双方7名ずつの委員が参加して、〜闇1年間の安全管理報告、∋楡瀑睥ち入り調査、0汰幹浜関係の書類の閲覧、ぜ禅娠答、というものです。

     今回の協議会では昭電側より、開設以来行ってきた遺伝子組換え実験(目的:バイオ技術を利用した機能性ケミカルズの模索)を今年から川崎で行うこととし、今後、未来永劫とまでは言えないが、土気の研究開発センターでは行わない、という報告がありました。

     93年に千葉市あてに提出した陳情書では、私たちが危惧することとして、^篥岨卅抜垢┝存海砲茲襯丱ぅハザード(生物災害)、化学物質や実験動物の取扱により有害物質が廃水、排気などを通じて漏出すること、昭電の公害体質(新潟水俣病、塩尻粉じん公害、遺伝子組換え食品事故など)、の3点でした。その点では,解消されるということになります。

    ・震度7の地震動は想定外

     ところで今回の協議会の焦点は、昨年の3.11を踏まえ、「大地震動時などの想定外のシビア・アキシデントへの対策」でした。3.11の震度は5弱で所内の棚類の転倒などなかったという報告でした。

     私たちの質疑に対し、昭電は大地震動については、
    「地震発生後、土気の耐震診断を再確認しました。
    建物の設計強度は、震度6強をクリアーしています。 
    新耐震設計法を満足しています。法的には強度増しの必要はありません。
    敷地地盤診断の結果、液状化危険の心配はなしと判定されています。」
    と回答しました。
     確かに立地上、津波の心配はなく、液状化も心配する必要はないようです。
     しかし、新耐震設計法は、建物の継続使用や危険物の漏えい防止を保障するものではなく、あくまで倒壊などによる人命の安全を念頭においたものです。
    終局耐力はどのくらいで、「想定外の震度7」の大地震動(継続時間、周期特性も危険側で考慮)が来た時に倒壊しないのか、建物と地盤の動的相互作用はどうなのか、その場合の危険物の漏えい防止策はどうするのですか、ということが私たちの質疑の趣旨でした。
    しかし、昭電側は建設(設計)業者まかせで、耐震設計や地震動に関する知見もなく、そこまで「想定」が及ばなかったようです。
    たとえ「専門」外であっても自らの頭でしっかり考えるという自立(律)の姿勢、そして常に「安全を疑う」という自らに厳しい姿勢をみせて欲しいものです。
    それが「公害体質」脱却につながると思います。

    Posted by : 川本幸立 | 東北・関東大震災と原発問題 | 15:29 | - | - | - | - |
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