市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

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漫画「美味しんぼ」騒動〜「原発再稼働・輸出」の障害となる事実をすべて隠ぺいしたい原発利益共同体の狼狽と臆病者たち(=事実を受け止める勇気のないヘタレ達)
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    市民社会フォーラム主催の昨年8月の吉井英勝氏の講演『福島原発事故の検証と教訓から〜再生可能エネルギー普及と地域再生へ〜』をU-TUBEを視ながら、昨日は改めてさまざまなことを考えさせられました。

    吉井氏は、規制委員会などの専門家たちは「原発利益共同体」が経営している「家畜小屋」に住んでいる「原発豚」に過ぎない、「再稼働・輸出」「我が国の安全保障」の根拠となっている原子力基本法、原子力規制委員会設置法をつくらせた原発利益共同体そのもの、その根底にある日米安保条約(日米軍事経済同盟)を直視しなければならないと指摘します。

    ●原発再稼働・輸出推進のために被曝情報を隠ぺいし、村民の被曝に加担した政府・福島県

    3.11の東電福島第一原発事故後、約2か月たってようやく全村的な避難が始まった福島県飯館村、この避難の遅れつまり村民の被曝に加担したのが政府・行政の遅れた避難判断(韓国フェリー事故で乗組員が再三「船室に留まるように」と放送して、乗客の脱出の機会を奪ったことと同じ)、被曝隠し、そして県放射線健康リスクアドバイザーの大学教授らです。アドバイザーらは2011年3月末から村内で「心配することはない」と触れ回りました。ところがその裏付けとなる一番重要な初期被曝の全容は不明でした。

    住民の行動記録と汚染地図を組み合わせた事故後4か月間の外部被ばく線量(村民の平均値)の推計は福島県(国測定の線量データ利用)が3.6ミリシーベルト、2011年3月28日の段階で村に入っていた京大原子炉実験助教・今中哲二氏らの調査チーム(米核安全保障局情報、採取した土壌サンプルデータ利用)が7ミリシーベルトでした。県発表値と2倍の違いがあります。
    今中氏は「県の調査はかねて不透明さが指摘されてきた。使っているデータも私たちと県では違う。行政から独立した立場の専門家として推計を出したことに私たちの調査の意義がある」と強調します。村民(酪農家)の一人は県の調査に応じない理由を「行政側は自らの責任回避のために事故の影響を小さくみせたがる。県に行動記録を提供しても、まともに計算するとは思えない。原発の危険性を冷静にみつめてきた今中先生の方が信用できる。深刻な数値が出たとしても、事実としてそれを受け止めるしかない」と語ります。
    (「東京」朝刊2014年5月12日)

    ●「風評被害」の一言で臭いものに蓋をしようとする反省無き福島県知事

    政府、福島県は村民の信頼を失っています。ところで今、漫画「美味しんぼ」の鼻血、疲労感の描写が「問題」視されています。元二葉町長や取材協力の医師らの発言は「問題」視されるようなものではありません。逆に、住民の生命の安全・健康を将来にわたり最優先すべき佐藤雄平福島県知事が、「風評被害を助長するような印象で極めて残念」「安心で安全だという正確な情報を流すと同時に、われわれもトップセールスに歩くことが大事」とし、臭いものに蓋をする姿勢が露骨です。

    有効な「風評被害」対策とは、まず情報を隠ぺいせず都合の悪い情報も含めてすべてオープンにすることにつきます。佐藤知事がやるべきことは、「原発豚」として原発再稼働・輸出にまい進する原子力利益共同体の片棒をかつぐのではなく、前掲した情報隠ぺいと御用学者を通じて根拠のない「安全デマ」を発信した犯罪行為を深く反省し県民に心から謝罪することです。その上で、鼻血、疲労感と被曝の関連をチェルノブイリ事故調査報告なども踏まえて、行政から独立した今中氏らを含めた専門組織で調査すべきでしょう。

    ちょうど、愛読している「たんぽぽ舎」のメールで漫画「美味しんぼ」騒動に関する話題がありましたので以下に貼り付けます。

    【参考】たんぽぽ舎【TMM:No2169】2014年5月14日(水)から

    1.美味しんぼ騒動についてDAYS JAPANから知性的な反論(広瀬隆)

    2014年5月13日 株式会社デイズジャパン
    「チェルノブイリ子ども基金」前代表 広河隆一

    *チェルノブイリでは避難民の5人に1人が鼻血を訴えた
    *2万5564人のアンケート調査で判明


    『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に掲載中の漫画「美味しんぼ」の「福島の真実」篇に多方面からの抗議が寄せられているという。問題になったのは次の2点である。
    ・原発を訪れた主人公が鼻血を出すシーン
    ・そして疲労感を訴えるシーン
    特に鼻血が「ありえない」 「不安をあおる」といった抗議を受けた。
    疲労感については、福島原発事故の後に私自身が経験している。2011年3月13日朝から原発周辺での取材を繰り返した後、持っていた測定器が振り切れるという経験をして、その後4月に突然非常な疲労感と下痢が襲ってきた。被曝と疲労感が関係あるのかどうか、あとで数字を見てもらう。
    鼻血はどうか。私自身は鼻の粘膜の異常を感じることはよくあった。しかしはっきり流れるほどの鼻血は経験していない。
    私は2012年7月に沖縄県久米島で福島の子どもたちの保養施設「沖縄・球美の里」を設立し、運営している。ここにこれまで訪れた保護者たちから、鼻血の話題はよく聞いた。 福島でも聞いている。だから誰でも知っていることかと思っていた。だがこれほど大騒ぎになって、「ありえない」とか「事実無根」とか聞くと、 そんなに完全に打ち消そうとするということは、どのような意図が働いているせいかと疑ってしまう。これほど大きく問題にすると、かえって「住民の不安をあおる」ことになってしまうではないかと思う。鼻血は出ると訴えている人がいることを認めた上で、それが大きな病気に結びつくのを防ぐためにはどうすればいいのかを話す方が建設的ではないかと思う。
    私は1986年のチェルノブ イリ原発事故以降、50回を超えて現地での取材と救援活動を続けている。そしてこの3月、映画取材班とともに、チェルノブイリを5年ぶりに取材した。ウクライナの高濃度汚染地域であるナロジチ地区のナロヂチ市中央病院の副院長に、日本では福島原発事故の後、鼻血がでた子どもが増えたという声を聞くが、チェルノブイリで はどうだったのか、と聞いた。すると副院長は「チェルノブイリでも事故の後、鼻血が増えた」と答えた。被曝によって血液系統の病気が増えた。鼻血もそうだが、貧血も増えたということだった。白血病の前段階の症状も増えたという。
    1990年、IAEAはチェルノブイリの調査団を派遣し、翌年、健康被害の不安を打ち消す報告書を発表している。その報告に疑問を持った私たちは、広河事務所とチェルノブイリ子ども基金(当時は私が代表だった)共同で、現地NGOの協力を得て、1993年8月から1996年4月まで、避難民の追跡調査を行ったのだ。
    調査項目は数百にのぼり、アンケート形式で本人あるいは家族に書いてもらった。回収できたアンケートは2万5564人分である。チェルノブイリ 避難民のこれほど大掛かりなアンケート調査は、ほかにはないと思われる。私たちにそれができたのは、これが救援目的におこなった調査だからである。人々の健康状況を把握できなければ、どのような救援を行っていいのかわからないからだ。
    アンケート調査は困難だったが、私たちにはIAEAにはない強みがあった。それはそれまでの救援活動の実績と現地の人々との信頼関係、チェルノブイリ支援の現地NGOとのつながり、である。ほかならぬ被災者に会うことが、私たちの仕事だったということも ある。
    この報告書は日露版の冊子の形で発行され、この3・11後にその一部を『暴走する原発』(小学館)に収録した。
    その結果から、鼻血と疲労に関する数字を中心に見ていきたい。ただ人々を襲ったのはもっと多様な症状だったので、それらも記載しておきたい。(中略)

    ●チェルノブイリ市(原発から約17キロ)の避難民のアンケート回答者2,127人
    (人々は事故からおよそ8〜9日後に避難した)


    「事故後1週間に体に感じた変化」

    頭痛がした 1,372人 64.5%           吐き気を覚えた 882人 41.5%
    のどが痛んだ 904人 42.5%                肌が焼けたように痛んだ 151人 7.1%
    鼻血が出た 459人 21.6%                  気を失った 207人 9.7%
    異常な疲労感を覚えた 1,312人 61.7%
    酔っぱらったような状態になった 470人 22.1%
    その他 287人 13.4%

      「現在の健康状態」

    健康 58人 2.7%                          頭痛 1,587人 74.6%
    のどが痛む 757人 35.6%              貧血 303人 14.2%
    めまい 1,068人 50.2%                 鼻血が出る 417人 19.6%
    疲れやすい 1,593人 74.9%           風邪をひきやすい 1,254人 59.0%
    手足など骨が痛む 1,361人 64.0%  視覚障害 649人 30.5%
    甲状腺異常 805人 37.8%              白血病 15人 0.7%
    腫瘍 80人 3.8%                          生まれつき障害がある 3人 0.1%
    その他 426人 20.0%
    (後略)


    2.井戸川前町長の発言は「風評」の問題ではない
    | 井戸川前町長の被曝は「風評」ではなく測定上の事実である
    | 合計すると短期間で数十mSvの被曝に相当する可能性がある
    └──── 上岡直見(環境経済研究所)


    漫画「美味しんぼ」の井戸川元町長のコメントに関して、被曝と健康被害を否定する主張がなされている。しかし事故当時の現地の異常な状況を考える必要がある。下図は筆者が作成したものであるが、単に福島県の公開データから双葉町内の空間線量率と累積線量(表示はGy)を示したものである。データの欠落もあるが値は空間線量率のみで、原発に近く粒子状物質の懸濁が多かったはずの現地では呼吸経由の被曝も同程度の寄与の可能性がある。
    http://homepage3.nifty.com/sustran-japan/datafile/futaba.pdf
    井戸川前町長は、住民や福祉施設入所者の避難のためにみずから屋外を奔走していたことが文献(『避難弱者』東洋経済新報社)に記録されている。防護服は着ていたようであるがマスクもなく、高線量下では効果は乏しい。漫画については、現在の福島第一原発を短時間見学しただけで、直ちに健康被害が出るとは関連づけられないという評価はあるだろうが、それを逆手に取って井戸川前町長の健康被害まで風評扱いするのは筋違いである。
    事故直後の空気中の放射性物質濃度(Bq/m3)はもはや測定しようがなく、またGyとSvの換算のところでも不確実性があるが、合計すると短期間で数十mSvの被曝に相当する可能性がある。一般に微粒子は気流に乗って空気と同じ挙動を示すが、原発の至近距離では大きな粒子が飛んで、MPではわからない局所的な高濃度が出現した可能性もある。諸々の不確定要素が大きな方に作用した場合には、一般に言われるICRPの基準を適用するとしても、日常生活とは桁ちがいの被曝であり、健康影響との因果関係が否定できない領域になる。
    井戸川前町長の被曝は「風評」ではなく測定上の事実である。町長と行動を共にしていた職員や、避難の遅れた住民も、同等の被曝をしていると考えられる。被曝と健康影響が関係ないと主張する者は何を根拠にしているのか。そもそも「風評」の原因を作ったのは誰か。漫画に乗じて井戸川前町長の発言を風評扱いするのは、福島事故をなかったことにするために、議論そのものを無視しようとする悪質な世論操作である。

     
    Posted by : 川本幸立 | 東北・関東大震災と原発問題 | 22:25 | - | - | - | - |
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