市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

<< 福島・富岡町、楢葉町〜高い空間線量と3年間時間が停止した無人の街に驚く 〜国家は戦争、天災、公害、原発人災で国民、被害者、被災者を切り捨てる | main | 戦後の文教政策を牛耳ってきた自民党の偏向した教育政策こそ、「日本の恥」の源〜NHK経営委員に未だ居座る百田尚樹の妄言を嗤う >>
理研STAP細胞問題〜背後にある「科学技術立国」という愚かな国策による研究費バブル時代と研究者の退廃
0
    理化学研究所(理研)の小保方晴子氏が、英科学誌ネイチャーに掲載したSTAP細胞に関する主要論文を撤回することに同意したことが今日(5日)の朝刊で報じられています。
    これにより理研と文科省は事態の早期収拾を図り、理研は組織改編に着手し、政府は今国会で見送られた理研を特定国立研究開発法人に指定する法案を秋の臨時国会に提出する意向とのことです。
    これでは「科学技術立国」という愚かな国策を優先し、臭いものに蓋をするだけの話で、科学技術研究に名を借りた税金の搾取と研究者の道徳的退廃に歯止めがかかることはなさそうです。

    国立感染症研究所の名誉所員の本庄重男氏は2003年にこの研究費バブルと研究者の道徳的退廃について次のように指摘していました。
    ―以前、生物系の研究者が得る研究費はせいぜい10万円単位か100万円単位の額が普通でしたが、今では1000万円単位の額となり、時に億単位にさえなるということを得々と語る人もいます。そして、研究費をたくさん確保すればするだけ必然的にその研究者の社会的地位も高まるというわけです。それにともなって、甚だ残念なことですが、研究者相互間での研究費の獲得合戦や、地位・権力を巡る争いなども、時に華々しく時に陰湿極まりなく起きています。甚だしい場合には、特殊法人の某研究所で相次いで発生した研究者同士の殺人事件や毒殺未遂事件などの例のような極端に退廃した状況も見られます。(中略)現実の科学技術は上のような状況の中で進んでいるのです。そして、良心的な反骨精神の強い研究者の批判と抵抗がなければ、ますますとんでもない方向に進むことでしょう。市民の皆さんは納税者の眼でバブル研究費の使われ方を監視し、平和と安全・健康と福祉に役立つ化学技術の必要を強く求めていくべきです。(「教えて!バイオハザード」バイオハザード予防市民センター、緑風出版、2003年5月)

    特定国立研究開発法人とは〜東電福島第一事故の収束を最優先に取り組むべき!

    特定国立研究開発法人とは、「20 年以上も続く低迷する我が国経済を再興するためには、科学技術イノベーションの創出を通じて新たな成長分野を切り開いていくことが不可欠である。このためには、国際競争の中で、科学技術イノベーションの基盤となる世界トップレベルの成果を生み出すことが期待される創造的業務を行う国立研究開発法人(仮称)を特定国立研究開発法人(仮称)として位置付け、総合科学技術会議、主務大臣及び法人が一体となって取り組んでいくことが必要であり、この趣旨は、平成25 年12 月24 日に閣議決定された「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」においても確認されたところである。」(「特定国立研究開発法人(仮称)の考え方について(案)」、H26年3月12日、総合科学技術会議)とあるように、日本の科学技術イノベーションの研究開発現場におけるけん引役として世界に誇ることのできるシステムを創り上げ、国際競争を勝ち抜く国力を培うことが期待されています。

    具体的には理研(独立行政法人、3400人、年間予算850億円)と産業技術総合研究所(産総研)(独立行政法人、経産省所管、3千人、年間予算1千億円)の2つを法人候補としています。
    1917年に日本初の研究機関として設立された理研は、戦争中、東条内閣下、陸軍航空本部の後押しで仁科芳雄氏を中心に原爆開発に取り組んだことは有名です。(「日米同盟と原発〜隠された核の戦後史」中日新聞社会部編、発行・東京新聞、2013年)
    一方、産総研は放射性物質除染効果や地震や火山災害予測、グリーンイノベーションの評価・管理技術、ロボット開発など研究をしています。

    今、日本国民が直面している一番の問題は、東電福島第一事故の収束と原発事故を二度と起こさないことです。汚染水対策、労働者や住民の被曝、デブリを含む放射性廃棄物処理、地震や火山災害予測など、この2つの研究機関こそ主権者である国民としっかり向き合い、これらの課題を最優先に取り組むべきでしょう。

    研究費バブル時代と退廃

    一方、組織改編とは、理研の改革委員会とSTAP論文についての懲戒委員会の結論を踏まえて、取り組むということですが、大学を含めた研究機関の不正(科学研究費など公費不正使用、データ改ざん・ねつ造)は目を覆うばかりの状況です。研究費が不足しているのかというとそうではなく、内閣府「科学技術関係予算の推移」をみるとまさに「研究費バブル時代」が継続しています。

    「科学者の国会」とも言われる日本学術会議も2013年には、2006年の声明「科学者の行動規範」の改訂版会長談話を出さざるを得ない状況です。

    2008年5月まで、バイオハザード予防市民センター会報の編集を担当していましたが、会報に研究機関・研究者の不正情報の一部を一時期(2004年〜2008年)会報に掲載していました。この中から、理研、産総研に関わる情報を以下に記します。(カッコ内は新聞報道された年月)

    理研の不祥事
    ・研究チームリーダー(40歳代)が部下に指示してデータの一部を除外し、別のデータを加えて再解析し論文を発表していた問題で、理研は、論文不正など不祥事全般を扱う「監査・コンプライアンス室」を4月に新設。秋までに不正防止策を作る。不正行為を研究する山崎茂明・愛知淑徳大学教授は、不正が起きる構造について「ボスは部下にプレッシャーを与えて研究成果をあげ、論文を書いて生き残る時代になった。不正が起きれば、それは個人の問題というより研究室全体の問題だ」と指摘する。(2005.8)
    ・旅費2重請求の東大大学院元教授、起訴猶予。理研の非常勤主任研究員だった02~03年、3件の海外出張で招待先と理研に旅費を請求、計190万円を搾取した疑い。(2005.6)
    ・理研理事が200万円流用。仁科記念賞を受賞した理研前理事が研究費の目的外使用と研究室内の研究環境を阻害する「環境型セクシャルハラスメント」行為を重ねていたことがわかった。前理事は依願退職をしており目的外使用は200〜300万円にのぼるとみられる。(2004.1)

    産総研の不祥事
    ・病原体約300株を内規に違反して十分な感染防止設備がないにも関わらず受け入れ、その事実を知らせずに非常勤職員に取り扱わせ、かつこれらが問題であることを知りながら公表しないばかりか隠ぺい工作まで行っていた。(2007.10)
    ・正規の手続きをしていない放射性物質を区域外で保管(2007.1)
    ・遺伝子組換え生物不適切使用(2006.9)

    この2つの研究所の特定国立研究開発法人化は、「国策」という圧力のもと、一層のバブル化と退廃を推し進めることになるでしょう。
    Posted by : 川本幸立 | 活動記録 | 21:15 | - | - | - | - |
    TOP