市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

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九州電力川内原発1,2号機の新規制基準による審査結果案についての意見を提出〜九州電力が人格権を最大限尊重する組織なのかどうか評価すべき
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    15日を締切日とする九州電力川内原発1,2号機の新規制基準による審査結果案についての意見書を14日に提出しました。
    基準地震動、火山の巨大噴火リスク、住民の避難計画についてはすでに様々な角度から指摘されています。
    私は、科学論、人格権を柱として、以下の4点の意見を提出しました。

    1.    発電用原子炉の設置及び運転のための技術的能力 組織の評価について

    ●事業者が原発の安全性を判断するに値する組織・見識を備えているかどうかを検証すべき

    原子力規制庁は「新規制基準を満たした原発でも事故は起きます。この基準は最低のもので、あとは事業者の責任です。放射能の拡散シュミレーション・モデルにも限界があります。その結果どうするかは自治体と住民、および事業者で判断してください」とし、田中俊一規制委員会委員長も、「現行の規制基準に適合しているかどうかだけで判断しているのであって、絶対安全という意味で安全ということを言われるのでしたら、私どもは否定しています」としている。
    つまり、今回の審査結果で、当該申請が、原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号(技術的能力に係るものに限る。)、第3号及び第4号に適合しているものと認められる判断されても、 嶌把禊霆燹廚箸いΑ嵒要条件」を満たしていることに過ぎず、十分条件ではあり得ないこと、∈2鵑凌該困派埖する項目についての施策及び妥当性の判断は、自治体、住民、事業者に委ねている。
    このことは、原子力規制委員会設置法第1条(目的)、第3条(任務)、第4条(所掌事務)に照らして、規制委員会が今回の審査で、少なくとも事業者が△量魍笋魏未燭垢砲佞気錣靴ち反イ任△蠍識なのかを判断する必要があることを示している。

    ●科学は人格権の尊重のもとに成り立つもの〜原発事故の悲惨さと福井地裁判決

    規制委員会は、今回のパブコメで「科学的・技術的意見」を募集するとしているが、肝心の「科学とはなにか」についての見識を示してはいない。人権論、科学論、科学方法論の研究者であった哲学者の故芝田進午氏は、次のように指摘している。
    ― 科学が成立する前提は、近代の人権宣言が基本的人権の筆頭に位置づける「人間の生命(健康を含む)、自由、幸福追求の権利」、すなわち「人格権の集合としての公共の福祉への権利」が保障されていなければならない。科学は、そのような人格権をよりよく保障し、実現するために営まれる創造的な精神的な活動である。科学は、広義には人間の権利、狭義には人格権から切り離して論じてはならないものである。
    (「人権論と科学論」芝田進午(「芝田進午の世界〜核・バイオ時代の哲学を求めて」桐書房))

    今年5月21日に福井地裁が下した関西電力大飯原発差し止め判決は冒頭、「ひとたび深刻な事故が起これば、多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである」と指摘し、憲法に保障された人格権(13条、25条)は「人に生命を基礎とするもの」「これを超える価値を見出すことはできない」と強調し、コスト低減、二酸化炭素排出を理由に国民の生命・健康よりも原発再稼働を優先する事業者(関西電力)の主張をきっぱり退けた。
    大飯原発差し止め訴訟は「科学裁判」の性格を持つものであるが、福井地裁判決は、科学裁判に相応しい人格権を根底に据えた判決であると評価される。

    ●九州電力が人格権を最大限尊重する組織なのかどうか評価すべき

    以上より、今回の審査では、「科学」の観点から、事業者(九州電力)が、人格権(人の生命を守ること)が、何よりも優先されるとの立場を鮮明にし、かつ組織文化として確立しているかどうかということがまず第一に検証されねばならない。しかし、この審査はなされてはいない。

    では、人格権を尊重する組織文化が根付いているかどうかどう判断するのか?人権の尊重、職場内民主主義の徹底、労働組合結成の自由、賃金差別がないこと、労働時間・被曝労働での法令順守、住民、国民への姿勢(生命・健康にかかわる安全情報の徹底した公開と対話する覚悟、主権者の信頼を確保するため不明な点、今後の課題を正直にすべてオープンにする姿勢)、次世代への使命(負の遺産を残さない)、などの観点から評価すべきである。

    2.その他人為事象に対する設計方針 航空機落下について

    ●少なくとも米軍機の飛行を日本政府がコントロールできない以上、オスプレイを含む米軍機の原子炉建屋への直接落下のケースを設計上考慮すべきである。

    原子炉建屋への航空機の直接落下のケースを確率が低いという理由で無視している。可能性がゼロでない以上、設計上考慮すべきである。
    一方、機体の安全性で懸念されている米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイの全国での飛行が政府によって容認されている。開発段階の1991年〜2000年で4回の墜落事故を起こし30人が死亡、実戦配備後の2010年アフガニスタンで墜落し4人が死亡、2012年4月、モロッコで軍事演習中に4人が死傷している。同年6月米フロリダ州で訓練飛行中に5人が負傷している。垂直離着陸モードから固定翼ボードへの転換時の構造的欠陥が指摘されている。
    日米安保条約、日米地位協定により米軍機には航空法など国内法の適用はされず、米軍機は日本側に飛行内容を通告する義務もなく市街地で低空飛行などの訓練を含めて自由に行うことができる。
    安全性が確立されていないオスプレイの配備で、日本政府がコントロールできない米軍機の落下の危険性が一層大きくなった。原発を仮想目標とする訓練の実施もありうる。
    米軍機の飛行を日本政府がコントロールできない以上、オスプレイを含む米軍機の原子炉建屋への直接落下のケースを設計上考慮すべきである。そして、その結果を踏まえ、米軍機の飛行ルートの制限を要請すべきである。

    3.大規模な自然災害又は故意による大型航空機その他テロリズムへの対応について

    ●武力攻撃、テロにより、「発電用原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがある」

    事業者による具体的な検討、対策結果が示されていない。これは重大事故等防止技術的能力基準2.1項が「適切に整備される方針がある」ことで事足れりとしているからであり、当該基準は欠陥基準である。具体的な対策もない故に具体的な審査もなされていない。

    「ひとたび武器を使用した紛争に日本が巻き込まれたら最後、(日本の)原発が武力攻撃をされる可能性を覚悟せざるを得ない。その場合でも、原発を安全に護ることは不可能である」
    「原発に対する武力攻撃には、軍事力などでは護れないこと。したがって、日本の海岸にならんだ原発は、仮想敵(国)が引き金を握った核兵器であること」
     「一たび原発が武力攻撃を受けたら、日本の土地は永久に人が住めない土地になり、再び人が住めるように戻る可能性がない」と指摘されている(たんぽぽ舎メール)。集団的自衛権の解釈改憲容認でその危険性は現実のものとして緊急に検討し必要な対応を実施すべき課題となりつつある。
    原子炉等規制法第43条の3の6(許可の基準)は「発電用原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと」(同第1項の1)を許可の基準とし、適合していない場合は許可してはならないとしている。
    発電用原子炉が武力攻撃の対象となることは、「平和の目的以外に利用されるおそれ」そのものであり、許可基準の根幹に関わるものである。テロあるいはミサイル攻撃による影響を具体的に解析することを求める。

    4.審査結果について

    ●新規制基準及び審査結果の限界と課題を併記すること

    原子力規制庁は「新規制基準を満たした原発でも事故は起きます。この基準は最低のもので、あとは事業者の責任です。放射能の拡散シュミレーション・モデルにも限界があります。その結果どうするかは自治体と住民、および事業者で判断してください」とし、田中俊一規制委員会委員長も、「現行の規制基準に適合しているかどうかだけで判断しているのであって、絶対安全という意味で安全ということを言われるのでしたら、私どもは否定しています」「(再稼働癌の判断は)事業者と地域住民、政府と言う関係者が決めるもの、私たちは関与しない」としている。
    つまり、今回の審査結果で、当該申請が、原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号(技術的能力に係るものに限る。)、第3号及び第4号に適合しているものと認められる判断されても、1.「最低基準」という「必要条件」を満たしていることに過ぎず、十分条件ではあり得ないこと、2.今回の審査で不足する項目についての施策及び妥当性の判断は、自治体、住民、事業者に委ねている。

    一方、政府は、欧州のようにコアキャッチャー(原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留する設備)や、二重の格納容器などが、審査の要件になっていないなど炉心溶融に備えるより根本的な改善策をもとめず、最低の基準にすぎない新規制基準を根拠もなく「世界一厳しい基準」とし、規制委員会が新規制基準に適合していると判断すれば「安全」だと強弁している。

    福島第一原発3号機ではメルトダウンにより、核燃料のほぼすべてが溶け落ちた可能性が高いとする解析結果を東電が8月6日に発表した。これにより廃炉作業がますます困難視されるとともに、炉心溶融対策強化のため規制基準の見直しが求められる。

    原子力規制委員会設置法第一条(目的)には、「中立公正な立場で独立して職権を行使する」とある。この立場を堅持し、政府の詭弁を許さず国民の誤解を招かないためにも、新規制基準が「世界一厳しい基準」ではなく「最低の基準」に過ぎないこと、規制委員会の「新規制基準に適合」という判断は、「安全」を保障するものではなく、「新規制基準を満たした原発でも事故は起きる」こと、規制委員会が「審査外」として審査していない主要項目(避難計画など)を、この「審査結果」に併記すべきである。

     
    Posted by : 川本幸立 | 東北・関東大震災と原発問題 | 20:42 | - | - | - | - |
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