市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

<< 九州電力川内原発1,2号機の新規制基準による審査結果案についての意見を提出〜九州電力が人格権を最大限尊重する組織なのかどうか評価すべき | main | 「偶然の出来事」なければ、千葉市全域も「無人の街」になっていた 〜東電「吉田調書」から読み取るべきこと >>
国際社会では民衆扇動罪で罰されるヘイトスピーチと「慰安婦のウソ」報道 〜歴史的事実を偽る安倍政権と読売、産経、文春、新潮らの犯罪
0
    ヘイトスピーチと「慰安婦」問題を放置する安倍政権を、国際社会が厳しく批判しています。

    7月24日には国連人権規約委員会が日本政府に対し、ヘイトスピーチの街宣活動の禁止と犯罪者の
    処罰を、「慰安婦」問題」では「公式謝罪と国家責任を認めること」や教科書への十分な記述など教育
    の重要性を勧告しました。
    その根拠として、差別される側が、刑法や民法で十分に保護されていないこと、あるいは元「慰安
    婦」への人権侵害が続いていることが指摘されました。

    8月29日には、国連人種差別撤廃委員会が、ヘイトスピーチについて集会やインターネット上など
    メディアにおける人種差別を煽る行為に対する捜査や訴追が不十分と指摘し、
        街宣活動での差別行為への断固とした対応
        ヘイトスピーチに関わった個人や組織の訴追
        ヘイトスピーチや憎悪を広めた政治家や公務員の処罰
    などを勧告しました。
    「慰安婦」問題については、日本政府による実態の認識や被害者への謝罪、補償が不十分であることに懸念を表明し、
        元「慰安婦」の人権侵害調査、侵害に関与した責任者の処罰
        元「慰安婦」に対する真摯な謝罪、全ての被害者とその家族への十分な補償
        慰安婦問題を否定する試みの糾弾
    を求めました。(「東京」8月30日朝刊など)

    2つの勧告について、日本弁護士連合会から会長声明がだされていますので参照ください。
    ・(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140801.html
    ・(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140905_3.html

    ●朝日新聞「吉田証言は虚偽」報告を「慰安婦のウソ」にすり替える右派メディアの犯罪

    「慰安婦」問題であ、「週刊金曜日」の奮闘が目立ちます。同誌の3本の記事(*)から、「朝日」
    報告とそれに対する右派メディア報道の誤り、「ねつ造」を整理してみましょう。

    朝日新聞は8月5,6日朝刊で、過去の「慰安婦」問題の自社の報道で、〆兔E腓如岼岼舵惻蹐蝓
    をしたと主張していた吉田清治氏の証言に依拠した報道(詳しい報道は91年の2回、93年以降はな
    し)について「裏付け得られず虚偽と判断」したこと、△發箸發抜愀犬里覆ぐ岼舵悗塙場などに動
    員された女子挺身隊とを混同する誤用があったこと、を認めました。ところが、「産経」「読売」など
    はこのことから、「H5年の河野談話の、慰安婦が強制連行されたとの主張の根幹はもはや崩れた」と
    主張しています。

    「読売」はわざわざ「慰安婦報道検証 読売新聞はどう伝えたか」を大見出しにしたチラシを我が
    家を含む各戸に配布していますが、読売自身が92年8月15日付夕刊で「吉田証言」を報じていたこ
    とに触れてはいません。さらに、87年8月14日付読売で「従軍慰安婦」について「特に昭和17年
    以降『女子挺身隊』の名のもとに、日韓併合で無理やり日本人扱いをされていた朝鮮半島の娘たちが
    多数強制的に挑発されて戦場に送り込まれた」と報道していましたが、そのことについても触れては
    いません。
    要するに「慰安婦=女子挺身隊」という認識は、「慰安婦」問題の調査が十分に行われていなかった時
    期の「漠然ともたれていた認識」を反映したものにすぎません。「慰安婦=女子挺身隊」でなくてそれ
    がどうしたの?!というレベルの問題です。

    そもそも「慰安婦」問題の節目となった報道は、91年8月の元「慰安婦」金学順さんの名乗り出と
    提訴、中央大学の吉見義明教授による軍関与を示す資料の発見であり、「吉田証言」とは無関係です。
    また、河野談話は「慰安婦」の強制連行について言及していませんし、河野談話「作成過程」検討チ
    ームが6月に発表した「報告書」も「吉田証言」を無視しています。一方、河野談話後、研究、調査
    により日本軍占領地における「慰安婦」の強制連行を示す証拠が発掘されています。

    つまり「産経」「読売」らメディアこそが、「慰安婦は性奴隷ではなく売春婦」と主張したいがために、
        「吉田証言と河野談話との不当な結び付け」、
        「強制連行」という論点の過大視、
        現に存在する「強制連行」の証拠の無視や過小評価、
        「強制連行」概念の不当な歪曲
    という4つの誤りを犯す「ねつ造」報道を行っていることになります。

    朝日新聞報道と同じ8月6日、国連のナビ・ピレイ人権高等弁務官が「慰安婦」問題に関して表明
    した日本への「深い遺憾の意」が報じられました。安倍政権、産経、読売らが国際社会での日本の評
    価を辱める役割をしています。
    つまり、安倍政権の閣僚、日本の右派メディアらは、国連の委員会が求める処罰の対象者に他なり
    ません。

    *「週刊金曜日」の以下の記事参照
    1.「右派の『慰安婦』問題歪曲の卑劣」能川元一、2014.7.4
    2.「吉見義明中央大教授に聞く〜右派紙の思惑が外れた『河野談話』検証」2014.7.25
    3.「右派紙の『慰安婦報道批判』のデマ」能川元一、2014.8.22.

    ●司法が認定した日本軍「慰安婦」

    「慰安婦」問題に関する一次資料は、敗戦時の隠滅で大半が失われ、また戦後当局の隠ぺいにより
    公表されていないのが実情である、といいます。
    とはいうものの、政府調査より先行した民間調査により軍の関与を示す明確な資料が次々と発見され
    ました。(「従軍慰安婦資料集」(吉見義明・編集・解説、大月書店、1992年)に詳しい)

    そして、91年8月の金学順さんの提訴を含め、日本軍「慰安婦」問題で2010年3月まで10件の
    裁判で判決が確定されました。10件すべて損害賠償は最高裁で棄却されましたが、内、8件で加害と
    被害の事実が司法により認定されています。(事実認定なしの2件は、被害を否定したのではなく、
    事実認定をしなかったもの)

    そこでは、各控訴人らの被害事実(証拠及び弁論)を踏まえ、内閣外政審議室発表「いわゆる従軍
    慰安婦問題の実態について
    」の内容
    がほぼ認定されています。その概要は以下の内容です。

    ・旧日本軍においては、昭和7年(1932年)もいわゆる上海事変も後ころから、醜業を目的とする
    軍事慰安所(以下単に「慰安所」という。)が設置され、そのころから終戦時まで、長期に、かつ広範
    な地域にわたり、慰安所が設置され、数多くの軍隊慰安所が配置された。

    ・当時の政府部内資料によれば各地における慰安所の開設の理由は、旧日本軍占領地域内で旧日本軍
    人が住民に対し強姦などの不法な行為を行うことを防止し、これらの不法な行為によって反日感情が
    醸成されることを防止する必要性があることなどとされていた。

    ・軍隊慰安婦の募集は、旧日本軍当局の要請を受けた経営者の依頼により、斡旋業者がこれにあたっ
    ていたが、戦争の拡大と共に軍隊慰安婦の確保の必要性が高まり、業者らは甘言を弄し、あるいは詐
    欺脅迫により本人たちの意思に反して集めることが多く、さらに、官憲がこれに加担するなどの事例
    も見られた。

    ・旧日本軍は、業者と軍隊慰安婦の輸送について、特別に軍属に準じて渡航許可を与え、また、日本
    国政府は軍隊慰安婦に身分証明書の発給を行っていた。

    ・慰安所の多くは、旧日本軍の開設関与の下に民間業者より経営されていたが、一部地域においては
    旧日本軍により直接経営されていた例もあった。民間業者の経営については、旧日本軍が慰安所の施
    設を整備したり、慰安所の利用時間、利用料金、利用に際しての注意事項等を定めた慰安所規定を定
    め、軍医による衛生管理が行われるなど、旧日本軍による慰安所の設置、運営、維持及び管理への直
    接関与があった。また、軍隊慰安婦は、戦地では常時旧日本軍の管理下に置かれ、旧日本軍とともに
    行動させられた。

    ・戦線の拡大の後、敗走という混乱した状況の下で、旧日本軍がともに行動していた軍隊慰安婦を現
    地に置き去りにした事例もあった。

    各控訴人らの被害事実については、「司法が認定した日本軍『慰安婦』」(坪川宏子・大森典子、かも
    がわブックレット、2011年)に詳しい。

    また、日本陸軍による当時のオランダ領インドネシア占領下で、オランダ人女性に対する強制売春
    事件に関するオランダ軍バタビア(現ジャカルタ)臨時軍法会議の調書は一次資料として貴重です。
    「『慰安婦』強制連行」(梶村太一郎他、金曜日、2008年)を参照ください。

    ●人格論、マイノリティの表現の自由を保障する為に、刑法にヘイトスピーチ処罰規定を設け、
    「慰安婦のウソ」処罰法の制定を〜国連勧告に正面から答えるために


    国連勧告を受け、自民党はヘイトスピーチの規制策を検討するプロジェクトチーム(PT)を立ち上
    げたとのことですが、あろうことか市民による国会周辺の反原発など街頭活動の規制をたくらんでい
    るといいます。高市早苗氏はヘイトスピーチについて「表現の自由との関係も考慮しつつ、啓発活動
    の充実や法的規制の必要性も含め検討する」との方針を示しています。(「東京」9/2朝刊)

    市民の街宣活動の規制は問題外として、自民党の対応の問題点として、「慰安婦」問題をヘイトスピー
    チと切り離して考えていること、「人間の尊厳」「人格権」という視点が皆無だということです。

    前田朗・東京造形大学教授(刑事人権論・戦争犯罪論)は、ヘイトスピーチについて
        人間の尊厳、人格権(憲法13条)に対する侵害であり、大きな被害を生み出す。
    憲法は人格権が表現の自由(21条)よりも優先する。
        法の下の平等や差別の禁止(14条)に抵触する。
        ヘイトスピーチの処罰と表現の自由とは矛盾しない。
        表現の自由を守るためにヘイトスピーチを処罰すべき。民主主義を守るためにもヘイトスピーチの規制が不可欠
        マイノリティの表現の自由を保障すべき。ヘイトスピーチの処罰は国際人権法の要請である。
    と指摘し、欧州諸国では、表現の自由を守り、民主主義を守るために、基本法である刑法の中にヘイ
    トスピーチ処罰規定を置いているのが通例としています。

    ドイツでは「アウシュビッツの嘘」を処罰する法律もヘイトスピーチ法であり、「アウシュビッツに
    ガス室はなかった」と発言すれば民衆扇動罪で処罰されること、フランス、スイス、リヒテンシュタ
    イン、スペインでもヘイトスピーチを犯罪としているとのことです。

    その上で、前田氏は欧州の「アウシュビッツの嘘」立法と同様に、「慰安婦のウソ」処罰法の制定の
    意義を指摘します。たとえ日本政府が立法化しなくとも、東アジア各国が立法化すれば、安倍首相の
    ように「慰安婦のウソ」発言を行った人物は身柄拘束を恐れて東アジア「漫遊」旅行もできなくなる
    そうです。もっとも、現職の首相である間は1961年の外交関係に関するウィーン条約によって身体
    拘束や裁判からは免れるということですが・・。
    (「増補新版・ヘイト・クライム〜憎悪犯罪が日本を壊す」前田朗著、三一書房、2013年、ほか)

    ともかく、刑法にヘイトスピーチ処罰規定を設け、「慰安婦のウソ」処罰法を制定することが国連勧告
    及び日本国憲法にしっかり応える道のようです。
     
    Posted by : 川本幸立 | 国政 | 13:41 | - | - | - | - |
    TOP