市民活動家・研究者(前千葉県議会議員)

◆ 川本幸立のブログ

<< 「憲法前文・九条の軍事・経済戦略」で、「憎悪と暴力の連鎖」を断ち切ろう!〜なぜ米政府の責任を問わないのか?!人質事件と閣議決定 | main | 後藤健二さんの願いを踏みにじる安倍首相の「復讐の誓い」発言〜「ダイヤモンドより平和がほしい〜子ども兵士・ムリアの告白」(汐文社)を読んで >>
国内でのBSL4施設稼働は、エボラ出血熱などの早期診断、侵入防止とは直接の関係はなく、バイオハザード(生物災害)の危険が増すだけ〜原発と同様、安全神話(HEPAフィルタ、キャビネット)に依拠し、施設の立地・欠陥を無視
0
    私が所属しているバイオハザード予防市民センター(略称:バイオ市民センター)の取り組みの紹介です。

    エボラ出血熱騒動で、全マスメディア、日本学術会議、長崎大学らが設置、稼働を強く求め、アベも国会で設置するとの答弁をしたBSL4施設ですが、今やBSL4施設の設置は「国策」と化している観があります。

    こうした権力とマスメディア、学者らの同盟(共犯)関係により、異論が排除される中、80年代前半から、国立感染研武蔵村山庁舎のBSL4施設の稼働に、武蔵村山市では市、議会が一体となって反対し阻止してきましたが、昨年11月、塩崎厚労大臣と市長が「稼働に向けて協議する」ことで合意しました。
    (バイオ市民センターでは昨年12月14日(投票日)に武蔵村山市でシンポを地元の方と協力して開催しました)

    これに対して、バイオ市民センターは昨年8月に日本学術会議に意見書を提出し、昨年12月14日(選挙の投票日)には、武蔵村山市で地元の方々と協力してシンポジウムを開催しました。そして、今月は、厚労大臣と国立感染研所長、武蔵村山市長あての要望書を提出しました。

    以下の文書をバイオ市民センターのHPにアップしていますのでご覧ください。
    ・武蔵村山市長あて要望書(2015年2月12日)
    ・厚労大臣、国立感染研所長あて「「国立感染研村山庁舎BSL4施設を稼働しないこと」を求める要望書(2015年2月2日)
    ・日本学術会議の「BSL4施設の必要性について」に対する意見書(2014年8月28日)」

    なお、国立感染研(村山庁舎、戸山庁舎)の安全管理の実態については、情報公開法に基づき、一昨年から昨年にかけて30件近い「行政文書開示請求」を行い、入手した約4千枚の文書内容を分析、検討しました。
    その一部を会報に報告しましたので、以下に貼り付けます。

    ■バイオハザード予防市民センター会報第83号(2014/1/21発行)から
    〜国立感染症研究所(戸山庁舎・村山庁舎)開示文書検討報告

     
    感染研は、HEPAフィルタ、バイオハザード対策キャビネットについて
    「責任ある管理」を行っているか?

    川本幸立(幹事、建築技術者・電気管理技術者)
     
    はじめに

    2001年4月に情報公開法が施行されて約13年となります。当時、私たちは同法施行と同時に国立感染症研究所戸山庁舎に安全管理の実態を示す多数の文書の開示請求を行い、膨大な量の公開文書を分析し、戸山庁舎で日常行われていた杜撰な管理の実態について、裁判等を通じて明らかにしてきました。
    昨年2013年5月に、感染研戸山庁舎・村山庁舎の安全管理の最新の実態を把握しようと、文書開示請求をし、同年6月に以下の文書の写しの交付を受けました。

    表1:2013年6月、国立感染症研究所開示文書一覧
    No. 開示文書名 枚数他
    • H24年度P2実験室バイオハザード対策用クラス競ャビネット点検報告書(戸山・村山)
    • BSL2実験室安全キャビネット定期点検業務仕様書
    680
    H24年度P3実験室バイオハザード対策用キャビネット点検報告書(戸山) 318
    H24年度P3フィルタ交換作業報告書(戸山) 285
    H2412月(P3)点検報告書(戸山) 326
    H24年度保守点検報告書(村山6号棟(P3))の給気HEPAフィルタ,キャビネット 437
    H24年度保守点検報告書(村山9号棟(P3))の一次側HEPAフィルタ,排水処理設備、安全キャビネット 628
    感染研病原体等安全管理規程第28条2によるH21~23年度の事故記録(戸山・村山) 65
    感染研病原体等安全管理規程第29条によるH20~24年度の報告記録 存在せず
    バイオリスク管理委員会のH20~24年度議事録 14
    10 高度封じ込め施設運営委員会H23年度議事録 2
    11 バイオリスク管理運営委員会H20年度議事録 5
    12 病原体等取扱安全監視委員会H20~23年度議事録 89
    13 各委員会規程 8
    14 感染研病原体等安全管理規程第42条に基づく報告H20~24年度 存在せず
    15 H24年度設備保守管理日誌(戸山) 365
    16 H24年度設備保守管理日誌(村山) 365

    すでに新井代表幹事が当会報81号(2013年10月1日)で、表1のNo.7の「事故記録」を分析検討した結果を報告していますので、本報告は「開示文書検討報告◆廚箸靴董表1のNo.1~6について特にHEPAフィルタ、バイオハザード対策キャビネットの安全管理の最新の実態について分析した結果を中心に報告させていただきます。
    なお、残りの開示文書(No.9〜13、15~16)については次号で報告を予定しています。

    1.334台のバイオハザード対策用クラス競ャビネットの管理実態は?
    〜技術基準(JIS)に適合していない?!(表1の文書No.1・2・5・6から)


    2007年に施行された感染症法第56条24では、特定病原体を所持するものは技術基準(JIS K 3800:2009「バイオハザード対策用クラス競ャビネット」)に適合するよう維持しなければならない、とされています。つまりJIS に基づき、バイオハザード対策用クラス競ャビネット(以下「クラス競ャビネット」という)は年1回以上の現場検査(密閉度試験、HEPAフィルタ透過率試験、気流バランス試験など)の実施が義務付けられています。

    クラス競ャビネットは、病原体を外部に漏出せず、実験者感染を防止する第1次のバリアーと位置付けられます。そのためには”存饗里100%捕捉するHEPAフィルタの性能、▲ャビネットの密閉度、A位務口部の微妙な気流バランスの確保、き 銑を確認するための適切な現場検査、ヅ切な実験操作、θ鷯鏤(地震、火災、停電など)対応・対策、が不可欠です。

    感染研は、実験差し止め訴訟の「裁判書証」で、「バイオハザードの最も一般的なものは実験室感染であり、安全キャビネット(川本注:正式名称「バイオハザード対策キャビネット」)が導入された1970年代後半から実験者、周辺者を含めて全く発生していない。施設から排出された病原微生物を含むエーロゾルが直接外部に拡散する事態が生じることはほとんど知られていない。HEPAフィルタと安全キャビネットの設置により、周辺住民への感染の可能性はほとんど皆無に等しい。実験室内での感染を防止することが基本的な要件だ」と述べていました。
    であれば、感染研は、HEPAフィルタ、クラス競ャビネットの性能を現場で厳しく点検する意義は百も承知の筈です。

    今回の開示文書によれば2012年時点で、感染研の戸山庁舎のP3実験室には26台、P2実験室には149台設置され、村山庁舎のP3実験室には11台、P2実験室には148台が設置されており、戸山・村山の2庁舎をあわせると334台(その他ハンセン研に15台程度)設置されています。

    1−1.HEPAフィルタの性能の点検が杜撰きわまりない?!

    HEPAフィルタは0.3μmの単分散粒子を99.97%以上捕集する効率を持ちます。しかし、この99.97%の効率は、「610×610mm角のフィルタで、直径約6mm(6000μm)の穴があいていても検査に合格する」(JIS K 3800:2009規格の「解説」)ものです。これでは病原体は容易にフィルタをすり抜けてしまいます。そこで、大きな穴が開いていないことを確認するためにJISでは原則として「走査試験」の実施が定められています。

    戸山庁舎、村山庁舎にある334台の「クラス競ャビネット」が、すべてJISで定める現場検査を合格した「適合品」なのかということを開示文書を元にチェックしました。
    その結果は次の通りです。

        報告書には準拠すべき法令や技術基準が記載されていない。つまり何に基づいて適合・不適合を判断したのか不明である。
        HEPAフィルタに大きな穴が開いていないことを確認するための走査試験について、詳細要件(漏れを検出する管の吸引口をフィルタ表面から25mm以内に保ち、移動速度は5cm/秒以下で検出管と走査域が重なるように、ろ材全面、フィルタ継ぎ目、及びフィルタの枠について走査する。その場合、フィルタからの気流と検出管の吸引速度が等しいこと。)を遵守したのか不明である。
        とりわけ、610×610mm角のHEPAフィルタの走査時間に要する時間は吸引量25.3l/分の検出管では計算上5分とされるが、報告書に記載の走査時間は2分が最も多いことから検査そのものが不十分であったことが推察される。
        上流側のエアロゾル供給量は0.3〜0.5μmにおいて1000万個/分以上が望ましいとされるが、実際は60〜80万個/分しかなく相当な誤差を考慮する必要がある。

    以上より、技術基準に不適合な手法で点検が実施されたものと推察されることから、HEPAフィルタの性能(HEPAフィルタのすべての箇所における最大透過率が0.01%を超えない)について未確認状態にあると言えます。

    1−2.P2実験室の5台に一台は不良品(不合格・基準値範囲外のもの)

    P2施設内設置のクラス競ャビネットについて、報告書(表1のNo.1)によれば、戸山庁舎30台、村山庁舎35台が不良品(不合格あるいは基準をはずれているもの)です。つまり両庁舎のP2施設内に設置されているクラス競ャビネットの約5台に一台が不良品です。
    詳細は以下の通りです。
    【戸山庁舎】
    ・ウイルス第二部2台、・細菌一部5台、・寄生動物部2台、
    ・感染病理部6台(内、不合格1台⇒流入開口部風速不足で、3年連続で不合格)、
    ・免疫部2台、・生物活性物質部3台、・細胞化学部4台、・昆虫医科学部2台、
    ・動物管理室1台、・エイズ研究センター2台、・バイオセーフティ管理室1台、
    【村山庁舎】
    ・ウイルス2部1台、・血液安全性研究部2台、
    ・ウイルス第3部5台(内、1台不合格⇒開口部風速・排気風量)、
    ・細菌第二部3台、病原体ゲノム解析研究センター1台(不合格⇒開口部風速・排気風量)、
    ・動物管理室5台(HEPAの迅速な交換・総合的なメンテ要求されている、内、1台不合格⇒製造後24年経過)、
    ・エイズ研究センター3台不合格(開口部風速・排気風量不足)
    ・村山研修5台、・感染病理室2台不合格(開口部風速・排気風量不足)、
    ・感染症情報センター2台、
    ・共通検定室2台(開口部風量オーバー⇒本来「不合格」にすべきでは)、
    ・インフルエンザウイルス研究センター3台(内、1台不合格⇒開口部風速・排気風量不足)、
    ・3号棟BSL3実験室1台(開口部風速・排気風量超過)、

    2.P3実験室の給排気用のHEPAフィルタの現場試験について
    (表1の文書No.3から)


    戸山庁舎のP3施設の給排気用のHEPAフィルタは2012年度は13室で交換され、交換後に、現場で性能試験が行われました。

    その報告書(表1のNo.3)によれば、
        クラス競ャビネットのHEPAフィルタについてJISが求めているような技術基準がないことから、走査試験は実施されていない。
         二次側で大きなサイズ(0.5〜3μm)の粒子をカウントしているにもかかわらず、何の根拠も示さず、「一次的にカウントされる再現性のないカウントは、計測器自身の電気ノイズ、サンプリングチューブ回路などから偶発的に剥離した塵によるものでリークではない」と断定して無視している。走査試験を未実施ということは大きな穴の有無のチェックをしていないことになり、フィルタをすり抜けてきた可能性を否定できない。
         検出口の配置等(HEPAフィルタやダクト面からの距離など)詳細が不明である。
    ことが指摘されます。

    3.国立感染研は、業者に現場試験を投げし、試験内容についても無知
    〜質問状に対する感染研の回答(2013年12月26日)から


    あまりにもずさんな報告書でしたので、現場検査の詳細を確認するために感染研の戸山庁舎に出向き、直接担当者に質問状(2013年11月29日付)を手渡しました。その回答(同年12月26日付)が昨年末に届きました。質問と回答を比較表にしてみましたので表2を参照ください。

    表2の感染研の回答をご覧になればわかる通り、無回答に等しいもので、感染研が現場検査の内容に無知で、検査業者に丸投げで何ら関与していない実態が推察できるものです。
    感染研にはバイオリスク管理委員会、高度封じ込め施設運営委員会、病原体等取扱安全監視委員会などの委員会がありますが、議事録をみてもこうした報告書内容について真摯に検討したあとはみられません。そもそも、キャビネットやHEPAフィルタの安全管理について自らの責任と認識しているのか、また専門的知見を有しているのか非常に疑わしく思われます。本来、実験者は自ら使用する設備、器具の安全性についての専門家であることが求められますが、そうした「責任ある管理」を感染研は研究者に求めていないようです。

    まとめ

    以上を踏まえて、私の感想などを簡単に記します。

    (1)2001年の開示文書で、当時、感染研戸山庁舎においてP3施設に設置したキャビネットのHEPAフィルタの走査試験で上流側に試験エアロゾルを供給することなく実施していたことが判明しました。また、2005年の調査でも、他の施設でも一次側の試験エアロゾル量の不足、検査条件の不明瞭が目につきました。(「バイオハザード対策の社会システム構築のための提言活動」報告書、バイオ市民センター、2005年)
    感染症法で技術基準(JIS)の遵守が定められたにも関わらず、相変わらず法を無視した杜撰な管理が今現在も日本全国の研究所で行われているだろうことが、今回の感染研の開示文書からも推察されます。つまり責任を負うべき当事者による「責任ある管理」の不在という相も変らぬ実態です。これではP4施設云々は少なくとも時期尚早です。

    (2)感染研には十数年以上昔のクラス競ャビネットが多数あるようです。
    次の指摘に感染研はどうこたえるのでしょうか?
    「ここで注意して欲しいのは、それぞれの時期に制作されたキャビネットは、それぞれの時期の仕様書に基づいて制作、認定されているので、古いキャビネットを新しい基準に照らして検査することはできない」(「ウイルス学分野のバイオハザード対策、キャビネットを中心として」(「ウイルス第56巻、第2号、日野茂男」)

    (3)技術基準(JIS)がいい加減なことです。JISには「走査試験によってHEPAフィルタのすべての箇所における最大透過率が0.01%を超えないこと」という規定がある一方、「走査試験のできない構造のキャビネットは、0.005%以下とする」との「例外」規定を設けています。つまり、大きな穴のチェックを行う必要がないとする規定です。なぜ0.005%なのかについて何の説明もありません。「安全よりも研究」を優先するということでしょう。そもそも、「最大透過率が0.01%を超えないこと」という規定自体も、HEPAフィルタに直径0.25mm(250μm)の穴の存在を許容するものです。

    (4)HEPAフィルタ、排気、「責任ある管理」に関する提案として、
    ・前項の例外規定を削除すること、
    ・実験室の給排気系統に設置されるHEPAフィルタも走査試験の対象とすること
    ・キャビネットの排気は直接屋外に排気することは許さず、実験室内に排気することとする。
    ・技術基準を遵守しない研究所は実験の実施を認めないこととする。
    ・厳格な安全監査のための「第三者機関」を設置するなお、新たな法を整備する。
    (2005年の当センターの法試案参照)
    以上



     
    Posted by : 川本幸立 | 活動記録 | 19:46 | - | - | - | - |
    TOP